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きまぐれ日記
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※銀土




仕事の休みはお互い不定期で、決まった日に居酒屋を訪れることはない。
なのになぜか、二人はよく顔を合わせるようになった。

初めのうちはお互いに顔をしかめてはあまり干渉することなく過ごしていたものの、
それが幾度となく続けば、店の込み具合でカウンターの隣になることもあり。
どちらともなく何気なく話をするようになって、その話にかすかな笑いも混じるようになった。

そんなある日のことだ。

「…台風か」
ニュースでは傘をとばされたリポーターが、合羽のフードを必死に抑えながら暴風雨のなか台風台風と叫んでいる。
テレビの前では沖田がせんべいを食べながら扇風機を陣取っている。

「この風、やらせらしいですぜィ。ちょっと確かめてきてくれやせんか土方さん」
そういって沖田が指を指した先では、先ほどのリポーターが宙を舞っていた。
「オイリポーター飛ばされてんぞ。ガチじゃねーか」
「最近のテレビは演出が凝ってやがるねィ、いいから行って飛ばされてこいや」
「上等だよ表出ろコラ、テメーを飛ばしてやっからよ」
「表は大荒れですぜィ、まっぴらごめんでさ」

リポーターの現地ほどではないにしろ、江戸の町にも台風は猛威を振るっている。

「…台風か」

だからどうということはない、けれど。

「明日休みでしょう土方さん、いつもみたいに酒でも呑みに行ったらどうでさァ」
「嫌味か」


そう。何事もなければ、こんな日には居酒屋に行くことが多い。
そして、高い確率で銀髪の男に会うことになる。

だが今日は、台風だ。
表になど出ようとも思えないし、こんな日にわざわざ出かけようとするなんて―――

思わない、

と、

思うの、だけれど。


「…え、ちょっと、副長!?どこいくんですか!外大変なことになってますよ!!あ、ちょ、副長ー!」


馬鹿馬鹿しい。

ぐっしゃりとしけった煙草をくわえながら横殴りの雨の中を進む。
傘など意味はほとんどないので、最初から持ってなどいない。

―――ああ、俺は今無性にあそこの酒が呑みてェだけなんだ。

他意などない。ありようはずもない。
半ばムキになりながらびちゃびちゃと水溜りの中を進む。

居酒屋の明かりが、見える。

今更のように、開店していて良かったと思う。この天気だ、店に人が来ようはずもない。
無駄足にだけはならなかったと、土方はほっと息を吐いた。そのとき。

ばしゃばしゃ、ばしゃ。

向かいから、足音がした。

「…あ」
「…お」


そのあと、ずぶぬれになった男二人が、嵐のおさまるまで呑み明かしていた。


おわり
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